産廃の排出事業者は誰?建設工事は元請・下請どちら?条文で整理

産業廃棄物の排出事業者とは、その事業の中で廃棄物を出した事業者のことです。建設工事の場合は、実際に作業した下請ではなく、施主から直接工事を請け負った元請が排出事業者になります(廃棄物処理法21条の3)。

「うちが壊したんだから、うちのごみでしょう?」。周南市・下松市・光市の建設業者さんから、よくこう聞かれます。この記事では、だれが排出事業者になるのかを条文で確かめたうえで、排出事業者が負う責任と、下請が責任を負う場面を順番にお話しします。

排出事業者は「ごみを出した事業者」。建設工事では元請です。処理を業者に頼んでも、排出事業者の責任はなくなりません
ご相談者

うちは下請で解体に入っています。現場のがれきは、うちが出したごみだと思っていたんですが、ちがうんですか?

行政書士 広戸克義

法律の上では、そのがれきは元請さんのごみとして扱われます。まずは「だれが施主から直接請け負ったか」を確かめるところから始めましょう。

排出事業者とは、だれのこと?

廃棄物処理法は、事業で出たごみの責任を、出した事業者に負わせています。これが「排出事業者責任」の出発点です。

廃棄物処理法 第3条第1項「事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」出典:e-Gov法令検索

産業廃棄物については、11条1項でもう一度、はっきり書かれています。

廃棄物処理法 第11条第1項「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。」出典:e-Gov法令検索
排出事業者(はいしゅつじぎょうしゃ)=事業の中で産業廃棄物を出した事業者のこと。条文では主に「事業者」と書かれています。ごみが最後まで正しく処理されるように責任を負う立場です。

「自ら処理」といっても、自分で埋め立てまでしなさい、という意味ではありません。許可を持つ業者に頼むこともできます(12条5項)。ただし、頼んだからといって責任を手放せるわけではない、というのがこの法律の考え方です。

排出事業者は「出した事業者」 工場 製造で出た廃プラ お店・事務所 営業で出た産廃 建設工事 現場のがれき・木くず 工場を 運営する会社 お店・事務所を 営む事業者 元請業者 (作業した下請ではない) 原則は、その事業でごみを出した事業者(3条・11条) 建設工事だけは21条の3で「元請」と決められています
原則は「出した事業者」。建設工事だけは元請と決められている

建設工事の排出事業者は、元請・下請どちら?

答えは元請です。建設工事は、元請から下請、孫請へと仕事が流れることがよくあります。そこで法律は、ごみの責任者を1社にまとめるために、特別な決まりを置いています。

廃棄物処理法 第21条の3第1項「土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部又は一部を解体する工事を含む。以下「建設工事」という。)が数次の請負によつて行われる場合にあつては、当該建設工事に伴い生ずる廃棄物の処理についてのこの法律(第三条第二項及び第三項、第四条第四項、第六条の三第二項及び第三項、第十三条の十二、第十三条の十三、第十三条の十五並びに第十五条の七を除く。)の規定の適用については、当該建設工事(他の者から請け負つたものを除く。)の注文者から直接建設工事を請け負つた建設業(建設工事を請け負う営業(その請け負つた建設工事を他の者に請け負わせて営むものを含む。)をいう。以下同じ。)を営む者(以下「元請業者」という。)を事業者とする。」出典:e-Gov法令検索

長い文ですが、ひとことで言うと「元請・下請で工事をするときは、現場のごみの事業者は元請」ということです。実際に壊したのが下請でも、運び出したのが孫請でも変わりません。

元請業者(もとうけぎょうしゃ)=施主(注文者)から直接工事を請け負った建設業者のこと。下請に仕事を出していても、元請のままです。
建設工事のごみは、だれのもの? 施主 注文者 元請A社 直接請け負う 下請B社 実際に解体 孫請C社 搬出を手伝う 現場で出たがれき・木くず・廃プラ 元請のもの 施主が2社に別々に頼んだとき(分離発注) 施主 建築のA社 自分の工事の排出事業者 設備のD社 自分の工事の排出事業者
何社が関わっても、現場のごみは元請のもの。分離発注なら各社がそれぞれ排出事業者

環境省の通知(平成23年「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について」)も、元請を排出事業者として処理の責任を負わせる、と説明しています。通知に添えられた「建設廃棄物処理指針」では、施主が建築と設備を別々の会社に頼む「分離発注」のとき、直接請け負った会社がそれぞれ排出事業者として示されています。

迷いやすいケースで確かめてみましょう

「工事に伴って出たごみか」「施主から直接請け負ったのはだれか」。この2つを見れば、たいていは答えが出ます。

場面排出事業者
自社工場の製造ラインから出た廃プラスチック類工場を運営する会社
元請A社・下請B社の改修工事で出たがれき元請A社(21条の3第1項)
施主が建築をA社、設備をD社に別々に発注A社・D社がそれぞれ、自分の工事の分
倉庫の整理で出た不要な棚(工事ではない)倉庫を使っている会社
新品を売るとき、同じ種類の使用済み品を無料で下取り下取りして運ぶことに収集運搬業の許可は不要とされています(環境省通知)

下取りについては、環境省の通知で「商慣習として同種の製品で使用済みのものを無償で引き取り」運ぶ場合は許可が要らない、とされています。有料で引き取る場合や、別の種類の物まで引き取る場合は同じとはかぎりません。当てはまるか迷うときは、県に確かめるのが安心です。

ご相談者

うちは元請です。ごみのことは、処分まで下請さんに任せきりにしていました…。

行政書士 広戸克義

そこは見直したいところですね。環境省の通知でも、廃棄物の扱いを下請任せにせず、元請が自分で処理業者を選んで契約するよう求めています。次の章で、元請がすることを整理します。

ここまで読んで「うちの現場は、だれが排出事業者?」と思ったら、契約の形をうかがって一緒に整理します。初回相談は無料です。

排出事業者の責任は、頼んでも消えない

排出事業者が処理を業者に頼むときは、守ることが4つあります。どれも「頼んだら終わり」にしないための決まりです。

頼んでも、責任は最後までついてくる 排出事業者 (元請など) 収集運搬 許可業者 中間処理 破砕・焼却など 最終処分 埋立・再生 マニフェストの写しが戻ってきて、終わりを確かめる 1 許可業者に頼む 運ぶ・処分する許可の 範囲も確かめる(12条5項) 2 書面で契約する 運搬と処分、それぞれと 契約(12条6項・令6条の2) 3 マニフェストを渡す 引き渡すときに交付し、 写しは5年保存(12条の3) 4 最後まで確かめる 最終処分が終わるまでの 処理を確認(12条7項)
排出事業者が処理を頼むときの4つの決まり
  1. 許可を持つ業者に頼む(12条5項)運ぶのは産業廃棄物収集運搬業者、処分は産業廃棄物処分業者などに頼みます。頼みたいごみの種類が、相手の許可の範囲に入っているかも確かめます(施行令6条の2第1号・第2号)。
  2. 書面で契約する(12条6項)委託契約は書面で結び、ごみの種類と量、運ぶ先の所在地、処分の場所や方法などを書きます(施行令6条の2第4号)。契約書は、契約が終わってからも決められた期間保存します。
  3. マニフェストを渡す(12条の3)ごみを引き渡すときに、産業廃棄物管理票(マニフェスト)を交付します。交付した写しは5年間保存します(施行規則8条の21の2)。
  4. 最後まで確かめる(12条7項)処理の状況を確認し、最終処分が終わるまで正しく処理されるように努めます。
廃棄物処理法 第12条第7項「事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。」出典:e-Gov法令検索

12条7項は「努めなければならない」という努力義務です。でも、軽く見てはいけません。頼んだ先で不法投棄などが起き、処分した業者だけでは片づけきれないとき、排出事業者が適正な料金を払っていなかった場合や、不適正な処理を知ることができた場合などには、排出事業者も県から支障の除去などを命じられることがあります(19条の6)。

また、許可のない業者に頼むと、頼んだ側も5年以下の拘禁刑か1,000万円以下の罰金、またはその両方の対象になります(25条1項6号)。「安く引き取ってくれる」だけで相手を選ぶのは危険です。

下請が責任を負う場面もあります

元請が排出事業者だからといって、下請はまったく関係ない、とはなりません。法律は、下請も「事業者」として扱う場面を3つ決めています。

下請も「事業者」として扱われる場面 ① 現場で保管 ごみを現場に 置いておくとき 保管の基準を 守る義務がある 21条の3第2項 ② 自分で運ぶ 小さな工事・少量 など条件つき 条件がそろえば 許可なしで運べる 21条の3第3項 ③ 他人に頼む 下請が処理を 業者に頼むとき 委託の基準や マニフェストの義務 21条の3第4項 元請の責任がなくなるわけではありません 「下請も守る」ルールが上乗せされるイメージです
下請が「事業者」として扱われる3つの場面(21条の3第2項〜第4項)

1つ目は、現場で産業廃棄物を保管するときです。下請も事業者とみなされ、保管の基準が当てはまります(21条の3第2項)。2つ目は、条件をすべて満たして下請が自分で運ぶとき。3つ目は、下請がごみの運搬や処分をほかの業者に頼むときで、委託の基準やマニフェストの決まりが下請にもかかります(同条第4項)。

なお、下請が産業廃棄物の収集運搬業の許可を持っていれば、元請から運搬を頼まれて運ぶことができます。この場合、委託契約を結び、マニフェストを交付するのは排出事業者である元請です。

下請が自分で運べるのは、条件を全部満たすときだけ

「一定の条件なら下請でも運べる」とだけ聞いて動くと、無許可の収集運搬になりかねません。条件は、21条の3第3項と施行規則18条の2でくわしく決められています。

  • その工事の書面の請負契約で、下請が自分で運ぶことを決めている
  • 解体工事や新築・増築の工事ではなく、請負代金が500万円以下の工事(引渡し後の瑕疵を直す工事なら、適正な請負代金に当たる額が500万円以下)
  • 特別管理一般廃棄物・特別管理産業廃棄物ではない
  • 1回に運ぶ量が1立方メートル以下だとはっきりわかるように分けて運ぶ
  • 現場と同じ県か隣の県にある、元請が持っている(または使う権利がある)施設へ運ぶ
  • 運ぶ途中で保管しない

ひとつでも欠けると、この特例は使えません。同じ人が工事を2つ以上の契約に分けて請け負っても、正当な理由がなければ1つの契約として500万円以下かどうかを判断します(施行規則18条の2第2項)。

瑕疵の修補(かしのしゅうほ)=引き渡したあとに見つかった不具合を直す工事のこと。

元請・下請、それぞれの確認リスト

最後に、立場ごとに確かめておきたいことをまとめます。現場に入る前に、一度目を通してみてください。

  • 【元請】施主から直接請け負った工事のごみは、自社が排出事業者だとわかっている
  • 【元請】運搬と処分の業者を自社で選び、それぞれと書面で契約している
  • 【元請】ごみを引き渡すときにマニフェストを交付し、写しを5年保存している
  • 【元請】最終処分まで終わったことを、戻ってくる写しで確かめている
  • 【下請】自社のトラックで運ぶなら、許可があるか、特例の条件を全部満たしているか確かめた
  • 【下請】現場でごみを置くときは、保管の基準を守っている

よくある質問

施主(発注者)は排出事業者になりますか?

元請・下請で行う建設工事なら、21条の3第1項により、現場のごみの事業者は元請です。施主が工事を頼んだだけで、排出事業者になるわけではありません。ただし、施主が自分の会社の事業で出たごみ(工事と関係のない不用品など)を処分するなら、その分は施主の会社が排出事業者です。

一人親方として下請に入っています。現場の端材を持ち帰ってもいいですか?

下請の立場で現場のごみを運ぶと、元請のごみを運ぶことになります。特例の条件をすべて満たすか、収集運搬業の許可がなければ運べません。持ち帰る前に、元請と運び方を決めておきましょう。

マニフェストは、下請が書いてもいいですか?

建設工事のごみは元請が排出事業者なので、マニフェストを交付するのは元請です。環境省の通知でも、下請が運ぶ場合を含めて、マニフェストは元請が交付するよう示されています。

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元請として委託の形を整えたい会社さんも、下請として収集運搬業の許可を考えている会社さんも、まずは今の現場の流れをうかがうところから始めます。建設業許可とあわせてのご相談もお受けしています。

行政書士 広戸克義

この記事を書いた人 広戸 克義行政書士/周南行政書士事務所 代表

周南市呼坂の古民家で事務所を開いています。相続・遺言、建設業許可、農地の手続きを中心に、周南市・下松市・光市のご相談をお受けしています。

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参考にした情報(2026年9月25日確認)

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